2018年2月23日〜3月7日(ご本人許可を得て転載しています)
(日本経済新聞 2018年2月23日)
オークション理論は典型的には、ある商品を誰にいくらで販売するかを決める方法を扱います。クリスティーズやサザビーズのように、参加者が一堂に会して美術品などの値段を競り上げていく場面を思い浮かべる人も多いでしょう。オークション理論では、この公開競り上げ型に限らず、参加者が入札額を他者に知られずに申告する入札方法(封印入札)も含めて議論します。
オークションで扱う商品には、美術品のほか、個人の不用品や携帯電話で使われる周波数帯域の利用権、さらにはウェブページの広告スペースなど様々なものがあります。
それでは、どのような場合にオークションが必要になるのでしょうか。オークションがよく用いられる状況として、商品の数が限られている場合、例えば全く同じものは一つしかないといった場合があります。このような希少な商品に関しては、売り手が買い手にとっての商品の価値を正しく見積もることが非常に難しくなります。
自分にとっては無価値に思える商品が、別の人にとっては意外なほどに価値が高い、またはその逆といった状況が生じ得ます。
同じ商品が多数あれば、とりあえず適当に価格を設定して販売し、よく売れるなら値上げし、売れないなら値下げするというように、売り手が適切な価格を設定することが可能ですが、希少な商品の場合にはそのような方法が使えません。
適切に設計されたオークション方式であれば、希少な商品に関しても買い手に価値に関する情報を開示させて適切な価格を設定することが可能になります。
オークション理論では、そもそも誰が商品を入手するのが望ましいのか、どうすれば適切な価格が設定でき、望ましい人に商品が販売されるのかといった問題を議論します。オークション理論はミクロ経済学の一分野であり、ゲーム理論などを活用して市場や制度の設計・修正を行うマーケットデザインと呼ばれる研究分野の主要な構成要素となっています。
*②〜⑥はこちらで読めます。
Auction Lab >>https://auction.amebaownd.com/
九州大学主幹教授
1984年東京大学工学部電子工学科卒業. 1986年同大学院修士課程修了. 同年 NTT に入社.
1990年〜1991年 ミシガン大学客員研究員. 2004年より九州大学大学院 システム情報科学研究院 教授.
2012年より同大学主幹教授.マルチエージェントシステムに関する研究に従事. エージェントの合意形成メカニズム,
制約充足/分散制約充足等に興味を持つ. 博士 (工学).
著書にオークション理論の基礎―ゲーム理論と情報科学の先端領域などがある