2026.06.24 メルマガ

D&Dの不動産メルマガ【2026年6月号】老朽化した収益物件の売却は「戦略」です

 

売却を検討されている老朽化収益不動産のオーナー様の多くは、「空室が増えてきたが、募集を続けるべきか」「立ち退きをしたほうが良いのか」という難しい判断に直面します。特に築50年を超える共同住宅では、単純に“満室を目指せば良い”という時代ではなくなってきています。

近年は建築費や修繕費の高騰、賃料下落と稼働率の低下に加え、旧耐震物件への融資姿勢(遵法性・対応年数の超過問題)も厳しくなり、古い収益物件としての価値が大きく伸びにくいケースが増えています。一方で、立地によっては地価の高騰から「再開発用地」として見た場合に、収益価格以上の評価が付くことが事実としてあります。つまり、不動産の価値は「既存の家賃収入」だけではなく、「将来どのように使える土地なのか」という再利用用途によって大きく変わるのです。

例えば、空室率が高い築古物件の場合、満室想定で利回り評価を行っても、購入者側は満室に要する修繕費やリーシングに要する時間などを織り込むため、価格は伸び悩みます。特にエレベーター更新、防水、給排水管、耐震問題など、多額の将来コストが見込まれる物件では、表面利回りだけでは評価されません。

一方で、再開発用地として評価される場合、デベロッパーは「何を建築できるか」「どの用途が最も収益化しやすいか」という視点で土地を見ます。マンション(分譲or賃貸)、福祉施設、ホテル、オフィスなど、用途が変われば土地評価も大きく変動します。 さらに、同じ土地でも事業者ごとに建築コストや利益目線などが異なるため、提示価格には±20%程度の差が生じることは珍しくありません。

ただし、立ち退きには時間・費用・法的課題が伴います。交渉が長期化する可能性もあり、「立退き後の売却」が必ず正解とは限りません。 だからこそ重要なのは、最初から方法を決め打ちするのではなく、事前に「そのまま収益物件として売却した場合」と「立ち退き・再開発を前提に売却した場合」の両方を比較検証することです。

老朽化不動産の売却は、単なる処分ではありません。“どの出口が最も価値を最大化できるのか”を見極める戦略設計そのものです。まずは物件のポテンシャルを多角的に分析し、市場がどのように価値を見出すのかを把握することが、後悔しない第一歩になるのではないでしょうか。

 

(執筆者)デューデリ&ディール 辻 祐史