美術品のように高額なものがオークションで取引されるのは、世界に一つしかないものには、「相場」があるようで、
ないからです。不動産も美術品と同様で、土地は特に同じものはひとつも無く「何円」と値札をつけて売るのに向いていません。
1億円で売れそうなものがあるなら、1億円の値札を付けて売るのではなく、1億円からオークションを始めればいいのです。
2007年にノーベル経済学賞を受けたロジャー・マイヤーソン(米国)は「マーケットデザイン」という新しい研究分野においてオークションを研究しています。彼がノーベル経済学賞で受賞した理由は、スタート価格の巧妙な設定方法に関するものでした。また、2012年も同分野において、オークションに関連する組合せに関して、アルビン・ロスとロイド・シャプレーが受賞しています。
しかし、実際の取引の場は商習慣のカスタマイズなどにより、学術的な理論の世界とは大きく異なります。
理論と現実の狭間を埋めるのが経験と実績です。現実のビジネスの場で培われた多くの経験と実績こそが、オークションを成功へと導くたまには不可欠なのです。
慶應義塾大学経済学部教授 デューデリ&ディール オークション技術顧問。
オークション市場や制度の設計問題で多くの国際業績をあげ、2014年に38歳で現職。
『マーケットデザイン』(ちくま新書)など著書多数。著書はアジアで多く翻訳されている。
NHK・Eテレ「オイコノミア」「欲望の経済史 戦後日本編」等に出演。