2020.07.29 メルマガ

D&Dの不動産メルマガ 第22回【インターネットを活用した土地売却の事例】

①売却内容
 3年前に相続された一筆の土地約85坪の敷地半分に自宅を建て、残り半分を青空駐車場として維持してこられたが、駐車場の借主が
 減少してきたため閉鎖して老後の資金確保のための売却依頼となった。
 売却代金をすぐに使う予定はなかったため、時間が多少かかっても高値での売却を希望された。

②物件の属性
 立地はJR線の快速停車駅から徒歩10分以内の閑静な住宅地(第一種住居地域、容積率200%)の一角。幹線道路から道路1本中に
 入っており騒音等の懸念は小さい。間口は約10m弱、前面の道路幅員約6m(南側接道)あり住居系として最適な場所であった。
 駐車場部分の分筆後に売却することとした。

③査定時の着眼点
 住居系地域にあり、戸建用地(1区画または2区画分譲)か収益アパート用地のいずれが最有効使用か判別しにくい規模であった。
 現況測量によれば駐車場部分の面積は約40坪。
(1)1区画の戸建住宅用地(エンドユーザーによる自己使用)
(2)2区画の戸建用地(戸建開発業者による2区画分譲用地)
(3)収益アパート用地(賃貸物件開発業者による開発地として)
 を想定した事業収支を検証し、それぞれのケースで土地値を検証した。

 容積率が高い場合は(3)の査定額が大きくなることが多いが、駅からの距離、建築費の高止まり等の要因から投資採算が合う
土地の仕入金額は、本件については戸建分譲の仕入価格よりも低くなった。
(2)の戸建開発事業者による2区画分譲前提での売却は、不動産オークションによる価格競争で高値を引き出すことができるが、
開発業者の販売コストと利益分だけ理論的にはエンドユーザーによる自己使用での購入価格を下回ることとなったため一旦保留。
(1)のエンドユーザー向け売却は、本件については土地40坪と1区画でも使用可能な面積であることと、エンド向け土地相場は
弊社査定の不動産会社の土地購入価格を2割~3割上回ることが見込まれるため、時間をかけてエンドユーザーを探索することとした。

④売却までのプロセス
 不動産オークションは高値を引き出す方法として最適だが、エンドユーザーへの売却が最適の場合は売却方法が異なる。
 エンドユーザーへの売却の場合、
「不特定多数のニーズを拾う必要がある」こと
「そのニーズがいつ拾えるかの時期の特定が困難である」こと
「時期を特定したオークションによる売却先の決定は難しい」こと
 等から不特定多数の集客のため、金額を開示して一定期間、物件情報を市場に開示しておくことが必要となる。

 そのため、本件の売却は以下の手順で売却を進めることとなった。

●エンドユーザー向けに自宅用地としてインターネットサイト(2社)への物件情報掲載を行うとともに、並行して地場に強い工務店や
 ハウスメーカー等、自宅用地を探しているエンドユーザーとの接点がある先への顧客紹介依頼を弊社から打診した。
●建築条件付ではない土地であるため購入検討者や工務店等が建物プランを検討しやすいように、現地写真、地図、測量図等の資料を
 サイト上に情報公開した。
●当初募集価格は強気の価格を約3ケ月継続。サイト上の閲覧数は約100件/月あるが反響はゼロ。
●3か月後、依頼者と価格改定の協議を行い、坪約7万円減額して概ね地域相場に近い金額での再掲載を行ったところ、再掲載直後は
 閲覧数に大きな変化はなかったが、1ケ月過ぎた頃から反響が急増した。

 問い合わせ頂いた際に状況を伺うと
「既に現地を確認して妻と相談している。やっぱり気になったから連絡した」
「ネットで物件を見つけてから既にハウスメーカーへ仮プランを作ってもらっている」
「この学校区で数年間探していた、今工務店さんと相談しているが大丈夫か」
等の反応が得られた。

●反響先を個別対応して4件目の先と条件合意して契約に至った。
●買主はエンドユーザーなので、契約後、住宅ローンの最終稟議承認後の決済となったが、営業開始から5か月間の売却活動となった。

 エンドユーザー向けの売却は、ネットや広告等の媒体を活用して不特定多数の見込み客の中から買主を探す活動をすることになる。
売却までの期間の絞り込みが難しく、また価格の競争機能を働かせにくい点はあるものの、時間をかけて相場より高い金額設定から
値段を落としていくことで、より高い値段の買主を探りあてることができる方法といえる。