2021.06.29 メルマガ

D&Dの不動産メルマガ 第33回【農地法について】


先月の生産緑地と関連して、今月は農地法に関する実例についてお伝えして参ります。農地の取引を行う場合、当事者と使用用途により大きく以下の3種類のいずれかによる許可(場合によっては届出で可)が必要になります。

①農地法第3条(農地としての権利移動)
所有者が農地の所有権を農地のままで所有権移転、賃借権の設定を行う場合、市街化区域か否かに関わらず一部の例外を除き農業委員会から農地法第3条の許可を得なければなりません。市街化区域であれば生産緑地もこれに該当しますが、生産緑地は市街化区域内で地価が高いことから宅地転用されることが多く、農地取引で主流となるのは市街化調整区域内の農地が多いと考えられます。
権利の移転先には農業継続が期待できる一定規模の農業従事者との諸条件があり、農地としての権利移転の場合は農業を継続してくれる相手であれば誰でも良いということではありません。無許可の場合はその契約は無効となり3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられることがあります。

②農地法第4条(自己使用での用途転用)
市街化区域内の農地を農地以外の用途に自ら転用する場合は農業委員会への農地法第4条の届出で済みますが、市街化調整区域内の農地の場合は都道府県知事等による許可が必要となります。弊社が関与した事例では、登記地目・課税地目が「田」であった農地がありました。当然に農地法の制限がかかります。但し、現況が山林であった為、農地以外の「山林」へ地目変更を行ったことがあります。
又、売却の依頼者の自宅の敷地で「宅地」と「畑」の2筆に分かれており、畑は数十年前から資材置き場や物干し場として自宅の生活場所の一部として利用している方がおられました。このような場合、事前に現況地目を「雑種地」へ地目の変更登記を行っておかないと登記地目が農地であれば農地法の制限を受けるため注意が必要です。

③農地法第5条(用途転用目的での権利移動)
農地を農地以外へ転用する目的で第三者へ譲渡または賃借権の設定をする場合で、対象地が市街化区域内にある場合は農業委員会への農地法第5条の届出を要し、このケースでのご相談は非常に多いです。
市街化区域内の「田」「畑」を宅地転用しての分譲目的、老人ホームや賃貸マンション建設用地として売却する場合は都市計画法上の開発許可又は建築確認申請後の確認済証を取得した後に農業委員会へ届出を行うため許可権者のフロー次第で売却完了まで6ケ月以上の長期間を要する事例が頻繁に発生します。生産緑地の場合は更に制限解除の手続きが必要となり追加の時間を要するので注意が必要です。

農地法は農業生産の基盤である農地の所有・利用の仕組みを定めた法律であり、厳格なルールがありますので、事前に監督官庁へご相談の上、計画的に考えることをお勧め致します。