2024.06.26 コラム

第70回 【特定生産緑地の売却スケジュールとリスク】

特定生産緑地と聞かれて、皆さんは何を思い浮かべますでしょうか。

 

※特定生産緑地

・・・市街化区域内の生産緑地として30年経過した後に10年間営農することになった農地

 

今回は特定生産緑地を売却する際のスケジュール管理と制限解除リスクについてお話しさせていただきます。

 

まずは特定生産緑地の売却に関係する特徴を挙げていきます。

 

・制限解除は所有者ではなく主たる従事者にかかっている

・制限解除申請後は撤回出来ない

・制限解除まで最低3ケ月以上かかる

・納税猶予の支払いが生じる場合がある

・解除後は固定資産税額が約200倍程度まで上昇(市街化区域の農地課税へ)

・事前に農地法上の転用許可が必要

・確定測量をしておかないと売却に不利

・小作人がいれば要注意

・固定資産税評価額は低いのに相続税は高い

・固定資産税評価額の約1,000倍以上の評価で売却できる可能性がある

 

当社(大阪コンサルティング事業部)がお手伝いした事例をご紹介します。

大阪市からほど近い市にあるその特定生産緑地は、接道要件を満たしておりませんでしたが、間口部分の法定外水路の払下げが出来れば接道要件を満たし資産価値が大幅にアップすることが分かりました。

買手である開発事業者とは、払下げ後の引渡しを売買条件とすることでポテンシャルの最大値の価格で売買契約を締結。所有者・買手・仲介者は決済という共通目標に向け3社で協力し合い進めることに。

 

払下げには、境界確定ならびに全ての利害関係人の同意が必要。

買手の開発事前協議は生産緑地の制限解除後でないと行政窓口での受付が原則受理されず、この契約におけるワーストケースは特定生産緑地の制限解除後の売買不成立。

売買解約後に、納税猶予金の支払い負担、固定資産税が上がると所有者にとっては大きな痛手となることに。

まずは必要な工程を把握し、進める順序をスケジューリングして所有者、買主双方の理解と納得にいたることが大切でした。

このケースでは契約〜決済まで約1年半の想定となりましたが、境界確定、利害関係人の同意に難航して2年以上を費やす事となりました。

 

隣接所有者、利害関係人、行政などの第三者の判断を必要とすることが多ければ、予期せぬ事由が起こりやすいもの。

リスクを最小化するために、関係する全ての工程を正しく把握しながら進捗の事実確認と予測を立てることが大切であると再認識した事例でした。