不動産の売却や境界確認などでは、所有者や関係者との合意が必要です。しかし、相続放棄や法人の清算未了などにより、話し合いの相手が見つからず、手続きが止まってしまうことがあります。こうした場面で検討できる法的手段を、弊社が実務で対応している事例を2つご紹介します。
【事例①】相続人全員が相続放棄した共有不動産
会計事務所からご紹介いただいた、親族間で共有する不動産の売却相談です。共有者の一人が亡くなり、多額の債務があったため相続人全員が相続放棄。亡くなった方の持分は登記上残ったままでした。
依頼者が長年維持管理を担ってきたため、これまでは大きな支障がありませんでしたが、売却を検討した段階で、他の共有者だけでは不動産全体を売却できないことが問題となりました。
このような場合は、「相続財産清算人」の選任を検討できます。利害関係人などが家庭裁判所に申し立て、選任された清算人が相続財産の清算を進めます。選任には一定の時間と費用がかかるため、現在、司法書士と連携して手続きを進めています。
【事例②】隣地所有者が清算未了の法人だった場合
隣地との境界確認を進めようとしたところ、登記名義人がすでに解散し、清算手続きが長年進んでいない法人だった事例です。法人名義が登記上残っている一方、境界確認書への署名・押印を誰に依頼すべきか、すぐには判断できませんでした。
まずは法人の登記や清算人の有無などを確認し、通常の手続きで対応できるかを検討します。そのうえで、所有者や所在を把握できない土地に関する要件を満たす場合には「所有者不明土地管理制度」の活用も選択肢となります。これは利害関係人が地方裁判所に管理命令を申し立て、選任された管理人によって土地の管理や、裁判所の許可を得た処分等を進める制度です。
こちらも管理人の選任に時間と費用がかかりますが、法制度を活用して不明者探しができたり、不明者が存在しない場合、管理人が選任され、管理人との交渉による手続きを進めることができます。
※事例は、関係者が特定されないよう、内容の本質を損なわない範囲で一部変更しています。
【まとめ】交渉相手がいなくても、解決の糸口はある
不動産の権利調整では、相手方が見つからないために問題が長年放置されることがあります。しかし、状況に応じて法的制度の活用を検討すれば、解決に向けて前進できる可能性があります。相続や不動産に関する相談で同様の問題に直面した際は、早い段階で不動産実務の専門家や司法書士・弁護士等と連携することが有効です。
(執筆者)デューデリ&ディール 日竎 智之