事業承継、M&A案件のサポート業務②
先月に続き、M&Aのサポート業務のご紹介です。
下記の案件は、一見すると通常の不動産売買のようですが、本質的には「旅館事業の事業承継」
取引で、通常の不動産売買とは異なる論点がいくつか出て参りましたので併せてご紹介致します。
【案件概要】
・長野県のリゾート地にある宿泊施設の土地建物の売買
(宿泊施設内にある什器備品は全て承継する。法人で雇用していた従業員は当然には承継しない前提)
【弊社の業務内容】
・弊社が業務を受けた内容は
①法人所有の宿泊施設の土地、建物及び借地上の建物の詳細調査(資産内容の特定=売買対象不動産の
特定、と売買対象不動産の詳細調査)
②実質的には宿泊施設の運営法人からの事業譲渡だったため、事業継続のための重要な不動産の売買
契約の作成に限ってのサポート
の2点でした。弊社の拠点は東京、大阪で、長野県の現地での売買交渉まで関与することが困難な為、
この点は現地に居られた売主、買主にお願いしました。(元々直接の接触あり)
【本件の事業承継での留意点】
買主が大手企業で各種簿外債務の承継に懸念を持ち、不動産売買仕立てになりました。
・従業員の承継は当然には行わず、物件売買後、個別に買主会社で再雇用
・過去の宿泊客リストは当然に引き継ぐことはせず、個別に案内を出して買主によるリスト登録を確認
(個人情報取り扱いの問題)
・顧客の送り迎え用のマイクロバス(代表者所有)の買取またはリースで後日対応
・旅館業の許可は当然には引き継げないため、買主サイドで事前に保健所等と事前調整を行った。
【不動産売買上の留意点】
・法人とそのオーナー一族で分けて保有していた土地、建物を一度に全て譲渡(売買金額の区分け)
・建物の躯体及び建物内の機械設備等は、事前に建物、機械設備の調査会社に依頼して、別途デューデ
リジェンスを行い、不具合箇所等は事前に把握
・自然公園法による許可(環境省)の取得
・土地建物以外の什器備品の資産計上は買主経理サイドで処理(売買契約書上は細部を明記せず)
・売買契約書内で、宿泊施設の「屋号、名称」の継続使用の許可を規定
宿泊施設の譲渡は、本来単純な不動産売買以上に、各種資産、許認可等の承継契約を締結する必要が
ありますが、本件はできるだけ簡素にしたのでこのような形になりました。
以 上