2023.08.29 コラム

第59回 【インボイス制度が不動産賃貸業の個人オーナーに及ぼす影響】

 

「消費税インボイス制度(令和5年度税制改正と不動産賃貸等の留意点)」より

 

 8月4日に、昨年に続き金井恵美子税理士ご講演によるインボイス制度のセミナー第2弾「消費税インボイス制度(令和5年度税制改正と不動産賃貸等の留意点)」を弊社で開催いたしました。

 今回は、「不動産賃貸等への留意点」をメインテーマに挙げて頂いたので、セミナー内容の中から不動産管理会社、不動産オーナーを多数クライアントとされている税理士の方々に参考となりそうな点をピックアップいたしました。

 

①太陽光の売電収入について

・「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT制度)の売電収入は消費税の課税対象となる。

・FIT事業者はインボイス発行事業者の登録をし、買取会社へ登録番号を通知することとされている。

・自宅に設置した設備の余剰電力の売却は「消費者による生活用資産の譲渡」であり消費税は非課税。

 

インボイスの発行事業者(被相続人)の事業を承継した場合

・相続人がインボイスの登録申請をした場合、登録通知がくるまで被相続人の登録番号が相続人の登録番号とみなされる。(みなし登録)

・共同相続で未分割の場合、みなし登録期間の間、分割が確定するまでは各相続人が共同で事業を相続したものとみなされる。(みなし登録)

 

賃貸借契約の解除により返還しないこととなる保証金

・貸付が終了した日の属する不動産所得の計算で、返還を要しないことが確定した金額を総収入金額に

算入する(所基通36-7)が、消費税については、「保証金を返還しない(所得に計上する)のは資産の貸付を行ったためではなく、

資産の貸付を行わなかった(解除した)ことに起因する」ため、現実に貸付をした期間の賃貸料を補填するものでない限り、

「資産の貸付の対価には該当せず、消費税の課税の対象にならない」との解釈になる。(保証金の期間経過による償却は消費税の課税対象)

 

不動産管理会社によるインボイスの代理交付、媒介者交付特例

・インボイス発行事業者が不動産管理会社に管理業務を委託している場合、管理会社が賃貸人のインボイスを賃借人に対して代理発行ができる。

・不動産管理業務は「課税資産の譲渡等の媒介」ではありませんが、国税庁のインボイスQ&Aによると「請求書の発行事務や集金業務と言った商品の販売等に付随する行為のみを委託しているような場合も対象になる」とあるので、媒介者として管理会社自身のインボイスを賃貸人に変わって交付することができる(媒介者交付特例の適用範囲に含まれる)との解釈になる。