不動産投資は一般的に多額の資金が必要となり、特にオフィスビルやマンションなどの1棟を購入しようとすると数十億円以上になる場合もあるため、株式や債券などと異なり個人にはハードルが高いとされてきました。
そんな状況の中で1980年代後半のバブル期に「不動産小口化商品」が生まれました。これによって少額から不動産投資ができるようになり、出資額に応じて不動産の賃料収入や売却益を得られるようになりました。しかし、バブル崩壊やそれに伴う事業者の経営破綻が相次ぎ、出資金が返還されないという事態も増えてしまいました。
そこで、投資者保護のために1995年に「不動産特定共同事業法」が施行され、事業者の経営基盤や管理体制などが厳格に審査されるようになりました。その後、何度かの法改正を経て、プレーヤーも増えており、市場規模は年々拡大しています。
以下で、小口化商品の契約類型やメリット、デメリットについてご紹介していきます。
契約類型は3種類ある
匿名組合型
・事業者と投資家がそれぞれ1対1で匿名組合契約を締結する
・不動産の所有権はない
・事業者の単独運営であり、投資家に意思決定権はない
・根拠法は商法535条
・不動産所得に該当
任意組合型
・事業者と投資家の全員で任意組合契約を締結する
・現物不動産に投資するのと同じ
・事業者と投資家の共同事業であり、投資家が事業者=理事長に委託する形となる
・根拠法は民法667条
・雑所得に該当
賃貸借型
件数が少ないため割愛します
不動産小口化商品のメリットならびにデメリット
メリット
・プロによってスクリーニングされた物件に投資できる
・「任意組合型」であれば相続対策に有効であり、節税効果も得られる
※所有持ち分は相続税評価額で算出されるので、出資額より圧縮できる
※不動産所得から減価償却費等を差し引き、帳簿上の赤字を他の所得と損益通算できる
・「任意組合型」であればREITなどとは異なり、小口化された現物不動産を保有できる
・不動産経営における管理の手間が発生しない
・リスク分散ができる
デメリット
・賃料保証はない
・融資が使えないため自己資金が必要
・契約内容によっては中途解約ができない商品もある
・事業者倒産のリスク
相続や贈与の対策として不動産小口化商品を検討するのであれば任意組合型(賃貸型)が適していると言えます。
プレーヤーが増えてきていることから、最近ではGINZA SIXなどの大型物件の小口化商品を展開している事業者もあります。
不動産小口化商品のリスクをきちんと理解した上で、ご自身の投資スタイルに合致した事業者を選定されることをおすすめします。