2023.11.28 コラム

第63回 【私道の問題点 〇〇でないと高く売れないかもしれません】

当社に売却を依頼されたAさんの事例をご紹介します。

Aさんの土地(約70坪)は、Bさんが所有する私道にのみ接道していました。

普段、Aさんは玄関の出入り・車庫への車両の出入りなど、当然のようにこちらの私道を通行・使用されており、Aさんの家の上水道や下水道などのインフラ配管等も当該私道を経由して公道にある公設管に接続されています。

お話を伺うと、何十年も前、Aさんの先代がご健在で、Bさんの方もまた先代がご健在であった時代に、ご厚意によってそうさせてくれたようですよ、とのことでした。
それも口約束であったため、当時のことを正確にわかっている人は誰もいません。
実は、こういった話は私道があるところ、必ずとは言わないまでもかなりの件数で存在しており、人によっては「過去のいきさつは一切知らない」というケースも多数ありました。

さて、Aさんから売却を依頼された当社からすると、
・土地は70坪、これは少し大きいから2宅地の建売用地になりそう。
・土地の形状も良く、地勢も平坦でプランも綺麗に出来そう。
・複数の建売会社が手を挙げそうなので、オークションで高値売却が見込めそう。
という考えに先立って、
「果たして、売れるかな・・・?」
という心配が頭を大きく支配します。

 

考えられるリスク
Aさんは私道の持分を持っておらず、お互い先代の口約束で、書面による取り交わしなどはなく、Aさんが第三者に土地を売却した場合、その第三者はBさんに断りなく勝手に私道を使用できるのでしょうか?
先代の、それも口約束での話が全く因果関係のない赤の他人に?

そこにはやはり、書面が必要になります。

もしBさんが簡単に「使って良いよ」と言ってくれた場合でも、将来のトラブルを回避するために必要かつ重要な書面となるのがこちらです。

「通行・掘削に関する承諾書」

Bさんから、承諾書にご署名とご捺印を頂けるかどうか、がカギになります。

無事、承諾書にハンコが頂ければ、ひと安心です。

建売用地として事業者へオークションができて、高く売れるかもしれません。

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たとえAさんが

「昔から使わせて貰っているし」

「近所づきあいも普通で、険悪ということもない」

「穏やかな良い方だし、大丈夫ですよ」

と仰られても、Bさんにお会いしてお気持ち・お考えを直接伺うまでは安心できません。

実際、すぐに快く応じて頂ける方もいらっしゃいますが、何度か面談の回数を重ね、次の購入者・計画内容や工事内容にご納得頂けてようやく承諾を頂ける、というケースがほとんどです。

建売会社のほとんどは、事業として私道の配管工事をし、第三者に新築住宅を販売するため、この承諾書の取得が「必須事項」となります。

つまり、Bさんから承諾書を取得できなかった場合には、いかに価格が決まっていても「売れない」結果になるのです。

 

また、私道所有者は一人であることは少なく、共有者が複数(10人超の場合も!)いることは珍しくありません。この場合、「共有者全員からの承諾書取得」という過酷なミッションが課されることとなるわけで・・・。

とにかく、私道の場合はご注意を!

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では、承諾書を貰えなければ諦めるしかないのか?

2023年4月、民法等の一部を改正する法律が施行され、私道の取り扱いについてインフラの引き込みに関して明文化がなされました。

私道の状況や内容をしっかりと調査し、確認したうえでの運用が必要ですが、どうしても所有者の許可が得られない場合でも、引き込み工事ができるようになりました。

しかしながら、車両の通行までは明記されないこともあり、「完全に」「自由に」利用できるというわけでもないですし、工事によって損害を与えた場合には償金の生じるリスクもありますので、「土地の利用・生活・再建築」は大丈夫ですが、いざ「売却」となると承諾書の取得はいまだ大きな意味を持っており、障壁であると言えるでしょう。

下記は、実際に承諾書取得が難しいと判断されたときに弁護士に相談したとき頂いた回答です。参考までに。

弁護士より、とある私道(位置指定道路)の場合の相談回答

民法213条の2第4項により、私道が共有地ではなく、単独所有地であったとしても、相談者Aさんは、Bさんの土地を掘削(使用)することができます。

ただし、この場合、事前(2週間から1か月前程度)に日時、場所、方法を所有者(Bさん)及び私道の使用者(もしいれば)に通知する必要があります(民法213条の2第4項が準用する同法209条第3項)。

また、Aさんの土地のために、Bさんの土地中に配管等の設備を設置する必要があります。そのため、その設備の設置についても、原則としてBさんから承諾を得る必要があります。

しかし、承諾を得られない場合であっても、民法213条の2第1項に基づき

必要な範囲で配管等の設備を設置することができます。

ただし、この場合も、事前(2週間から1か月前程度)に、その目的、場所及び方法について私道の所有者であるBさん及び私道の所有者に通知する必要があります(同法第3項)。

参考条文

(継続的給付を受けるための設備の設置権等)
第二百十三条の二 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

(隣地の使用)
第二百九条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

以上

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