こんにちは。
株式会社デューデリ&ディールの藤原です。
今回は、2025年万博開催を控えインバウンドへの期待も高まっている「大阪市」と、外国人旅行者に根強い人気を誇るものの、民泊に対する規制の厳しさが全国的にも注目を集める「京都市」を例に民泊事業についてご紹介します。
日本政府観光局が発表した2024年の訪日外国人数(推計値)は円安等を背景に、前年比47.1%増の3686万9900人となり、コロナ禍前の2019年(約3188万人)を約500万人上回り、過去最多を更新。また、2024年12月の訪日外国人数は348万人となり、1964年の統計開始以来、初めて単月として340万人を突破したとのニュースがありました。
政府は2030年訪日外国人旅行者数6,000万人を目標に掲げており、今後より一層の訪日外国人の増加が見込まれます。
訪日外国人の増加とそれに伴う宿泊施設不足、そして増加傾向である空家の活用方法として、近年注目されているのが民泊(民間宿泊施設)です。但し、一言に民泊といっても、その内容は様々です。
民泊事業を行う場合、主に以下3種類に分類されます。
① 国家戦略特別区域法に基づく認定を受ける(特区民泊)
② 住宅宿泊事業法に基づく届出を行う(新法民泊)
③ 旅館業法に基づく許可を受ける
上記種類ごとに、『年間営業日数』、『最低宿泊日数』、『居室の床面積』等の細かい規定が定められています。
■■大阪市の場合■■
国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例、いわゆる「特区民泊」に指定されており、実績は他の特区民泊指定地区より群を抜いています(内閣府発表2024年12月31日時点大阪市の認定施設:5,587施設、15,568居室、次点の東京都大田区:認定施設:265施設、630居室)。
大阪市特区民泊の主な特徴は『年間営業日数に制限が無い事』、『周辺施設による制限が無い事』、『宿泊日数は最低2泊3日』、『民泊施設の環境整備(施設・室内の案内表示、居室内のWi-Fi整備、キャッシュレス端末の導入等)に補助金がある事※審査があります』等が挙げられます。
■■京都市の場合■■
特区民泊に指定されておらず、民泊を始めるためには、上記②住宅宿泊事業による届出、③旅館業法による許可受けるかのどちらかを行わなければなりません。
ここでは、主に住宅宿泊事業について説明していきます。
一番の特徴として『年間営業日数は180日まで』と制限がある事です。京都市ではその上で独自の規制(条例)により、『住居専用地域では原則1月15日~3月16日のみ営業可能である事』『管理者が住宅から10分で到着できる場所(宿泊施設から道のりで、おおむね800m以内))に常駐している事※深夜早朝問わず、トラブル発生時には10分以内に現場に到着できる体制が必要』『宿泊者の本人確認は対面での実施が原則』等の厳しい定めがあります。
空家や空室に悩む不動産オーナーにとって、民泊は解決法の一つとして魅力的ではありますが、近年は騒音やゴミ問題、プライバシーや安全への懸念から、地域住民との摩擦が問題視されるケースも増加しています。
また、アパートの空室を民泊に転用した場合、日本人であれば当然と考えるマナーを守ってもらえず、トラブルが生じてしまう事も考えられます。その影響で、既存の入居者が退去してしまっては、空室リスク対策としての民泊が本末転倒になってしまいます。
民泊を検討される場合は、宿泊ニーズ・競合物件の調査の他、不動産所在地の自治体の規制、近隣住民への配慮・調和が図られるか等、事前情報の収集・確認が必要不可欠といえます。
(執筆者)
(株)デューデリ&ディール
藤原 友也