不動産投資家調査（日本不動産研究所）
日本不動産研究所が半年に１回公表している「不動産投資家調査」を不動産の投資
利回りの推移を見る参考資料として弊社は重視しています。多数の投資家の予想値の
集計結果であり、現時点と近い将来の不動産投資マーケットを投資家がどのように見
ているかがおおよそわかるためです。
今回も定点観測的に2022年4月現在の最新版の内容を参照してみました。
日本不動産研究所のサイト
https://www.reinet.or.jp/?page_id=172
※投資家調査の前提：186社の不動産投資関連企業（銀行、生保、大手不動産会社、
外資系投資銀行等）への回答依頼をかけ、うち141社からの回答を受けての調査結果
となっています。
①投資種別毎の期待利回りの推移
・コロナ禍でも不動産投資需要は衰えておらず、Ａクラスのオフィスビルの期待利回
りは6か月前の前回調査から東京(大手町、日本橋、新宿、池袋等)、札幌、横浜、大阪
、福岡等で0.1％～0.2％低下している（東京大手町：3.3％／大阪御堂筋：4.4％等）
だけでなく、実際の取引利回りは期待利回りより0.2%～0.4％程度、更に低い水準に
あることから、投資家の需要の底堅さが見てとれます。
・賃貸住宅も投資ニーズは衰えず、ワンルームの利回りは低いままであるが、東京の
利回りはほぼ横ばいで推移しており、全国的にも低下しているのは京都、大阪、福岡
だけであることから相場としては高値安定しているとみられる。一方でファミリータ
イプの利回りが全国的に0.1％程度低下していることから賃貸住宅でも相対的に利回り
の高い種別への投資にシフトしていると考えられます。
・コロナ禍の影響で逆にニーズが増えている物流施設、倉庫の投資利回りは東京、名
古屋、福岡で0.1％低下と緩やかな相場の上昇傾向は続いており、商業店舗の期待利回
りは郊外型を中心に凡そ0.1％低下しており、前回までの横ばい傾向から今後の相場の
上昇が見込まれます。
・宿泊特化型ホテルの期待利回りは全調査地点で6か月前の調査と変わらず横ばい、と
の結果が出ており、実際の営業面ではコロナ禍の悪影響から完全に脱したとはいえない
ものの、価格相場としては下げ止まったと言えそうです。
②賃料動向は6カ月前の調査より東京、大阪とも「減退局面に転じた」と回答している
投資家が増加し、半年後の見通しでも「減退局面」、「底に近づいている」と見る投資
家層が増えている。実態経済の停滞が賃料に悪影響を及ぼしているとみるか、コロナ禍
の影響で現在は下げ基調にあるが、この影響が薄れるにつれて下げ止まるとみるか、で
将来予想は変わるものの、取引相場の堅調さに比べ賃料動向の今後の推移が不透明です。
③元本価格は6か月前の「減退局面に転じた」の割合が減って、「今がピーク」との見方
に逆戻りしている感がある。不動産投資の底堅さがみられるが、コロナ禍の影響が緩和
されてきていることが反映して当面は相場を高値圏が維持されるとの見通しと読み取れ
ます。
④今後の新規投資へのスタンスは「積極的」との回答が6か月前の前回比で1％減少し、
「当面控える」が前回比変わらず、の状態あることから投資需要は旺盛なままの状態が
続いている、といえそうです。
