2020.01.28 メルマガ

D&Dの不動産メルマガ 第16回【借地権付き建物の取引事例】

 昨年末、相続で承継した借地権付建物の売却のお手伝いをさせて頂きました。底地の売却の依頼は時々ありますが、
借地権付建物の売却依頼は稀です。今月は以下の事例で取扱上の論点をご紹介いたします。

★事例
 ・大阪市内の駅近くの近隣商業地域内の約120坪の土地上にある借地権付建物3軒の売却。
 ・対象建物は昭和20年代築の2階建の木造店舗、住宅等3軒で元の自宅を含む。
 ・土地(底地)の所有者は近隣のお寺。対象地を含めて数多くの底地を所有。
 ・底地人提示の譲渡承諾料は路線価×借地権割合×借地面積×0.1、建替承諾料は譲渡承諾料の1/2

●今回の取組概要
 ・対象建物は築年数が古い上、借地面積は約120坪、建物延床面積は約110坪の規模感から、一般顧客が購入する事は想定
  しづらい。一方で最寄駅より徒歩5分以内と立地が良かったことから、権利付物件(底地権や借地権付の物件)の購入を
  得意とする不動産業者への売却を提案。積算価格>収益価格で大きな乖離があった(借地権付建物の価格は流動性の低さ
  が原因で時価が相続税評価を大幅に下回ることが多い。)
が、売却の実現性がある査定額をレンジで提示。

●売却にあたり、整理した条件
 ・対象建物3軒のうち2件が未登記であったため、事前に表示、保存登記を完了すること。
 ・未登記家屋の一部に固定資産課税台帳名義が先々代となる家屋が存在(非課税)。各相続人より書類や印鑑を集める事が
  困難な為、当該家屋については表示登記が不可能である事を承知で買受すること(当該家屋については未登記の状態で引渡)。
 ・家屋や室内設備の一切の瑕疵担保責任を免責とすること。
 ・既存の借地契約を承継せず、購入者が底地所有者と新たな土地賃貸借契約書を締結すること。

●購入検討先への営業プロセス
 ・大阪市内を中心に権利付物件の買取実績がある事業者50社をリストアップし、弊社が直接の紹介活動を行ったが買取意向
  を示す先は無かった。次いで東京都内まで候補先選定を広げて追加で30社に紹介。
 ・物件紹介先の反応の概要は以下の通りであったが、都内の不動産業者が1社だけ購入意向を示した。
  「底地の買取は積極的に行うが、借地権は買取後の活用・転売の制約が多い為、不得手。」
  「将来的に底地の購入ができる見通しがなければ検討できない(底地所有者に売却意向は無し)。」
  「購入を検討出来る金額は売主がお寺に支払う譲渡承諾料以下となってしまう。」
 ・今回の購入検討先は家屋を大幅に修繕した上で、収益物件としての運用を計画しているとの事で買取金額は弊社の査定
  レンジのほぼ中間額(譲渡承諾料支払後も十分に手残りが残る金額)であった事や、残置物の売主の負担での撤去を条件
  としない事等、売主にとってメリットがあったため成約に至った。

 個別性の強い底地、借地の売却は「売却条件の整理(価格を含む)」と「候補先の選定」が重要です。