土壌汚染について
土地取引において土壌汚染が発見されれば売主買主の双方への重大な経済的損失につながる可能性があるため、多少でも
懸念事項が判明してしまえばコンプライアンスの観点からも調査をせざるを得ないのが実情である。
宅建業者としてどこまで対応するか
しかしながら「宅建業者は土壌汚染の専門家ではないので,全て取引において常に土壌汚染に
関する詳細な確認調査を行うべき義務を負っているわけではないが、当該土地及び周辺地域の視認,公表資料の収集,関係
者及び行政庁への問い合わせなど簡易・容易な手段による情報収集は最低限行うべきであり,これら調査の結果得られた情
報については当事者に告知する」とされている。
弊社では物件の特性、周辺環境上、よほど明らかでない場合を除き、所有者への過去の使用状況のヒアリング及び土地の物
件調査の際に旧住宅地図や国土地理院等で過去の使用履歴を見るようにしている。
また行政調査では環境課等で、当該地周辺で『有害物質使用特定施設』の有無、『形式変更時要届出区域』や『要措置区
域』(以下注)に該当するか、を調査してみる。但し、これらは土壌汚染対策法(2003年施行)以前に存在していた工
場等が網に掛かからない場合もあり、同課で水質汚濁防止法(1971年施行)上の届出施設に該当しているかどうかも確認し
ておきたい。
これらは土地取引上の目的からすれば告知事項にも該当する。
上記のいずれにもあてはまらない実例
弊社で上記のいずれにも該当しない工業地域内の青空駐車場の土地活用の相談を現在受けている。相続により取得された土
地であり半世紀前まで建っていた工場の基礎が埋まっており、基礎を撤去した後の更地を売却するか有効活用するかのご相
談であった。
ところが基礎の撤去中に異臭があり且つ色の付いた「土」が地中から出てきたため、所有者と協議のうえ売却するなら土壌
調査義務がない土地でも、異臭のする「土」の存在は買主へ告知する必要があるとの認識に至った。但し、現時点で「土」
が土壌汚染対策法上の特定有害物質(26項目)とは確定したわけではない。買主候補への事前ヒアリングを行うも、この
ような土壌汚染があるのか否か曖昧な状態で土壌改良コストを不要と考える先はなかった。
そのため土壌汚染調査会社に依頼しフェーズ1(資料、ヒアリングによる調査)を行ったところ、戦前に戦闘機の部品を製
造していた工場があったことが判明した。さらに半世紀前の基礎を埋めた土がどこかの汚染土の可能性も有りフェーズ2(検
体調査)を行って真相を明らかにする予定である。改良コストが判明すれば相続税申告における土地評価の減価修正をする
ことも検討されるようである。
(注)
「有害物質使用特定施設」・・特定有害物質をその施設において製造し、使用し、又は処理する工場又は事業場の敷地
「形式変更時要届出区域」・・土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じるおそれがないため、汚染の除去等の措置が
不要な区域(摂取経路の遮断が行われた区域を含む。)
「要措置区域」・・土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生じるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域